アルポート症候群とは

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  • アルポート症候群って
    どんな病気なんだろう?

  • 原因不明の腎臓病と言われた

  • もともと腎臓病はあったけど、
    最近耳の聴こえがよくない気がする

腎臓の役割

腎臓は体に2つあり、血液中の余分な水分や老廃物をろ過して尿として排出し、血液を清潔な状態に保つ重要な臓器です。
血液は腎動脈を通じて腎臓に流れ込み、腎臓内の糸球体というまん丸の構造物でろ過されます。糸球体には糸球体基底膜という膜があり、血液中の必要な成分(たんぱく質や赤血球など)が尿に漏れ出ないようにする働きをしています。アルポート症候群では、生まれつきの遺伝子の異常のために、この膜の構造がぜい弱になってしまい、尿中にたんぱく質や赤血球が漏出してしまい、腎臓病を発症します。

アルポート症候群とは

アルポート症候群は遺伝子異常によって発症する病気で、主に以下の3つの特徴的な症状を伴います。

  • 腎臓病(尿たんぱく、血尿、腎不全、近年「慢性腎臓病」と呼ばれています。)
  • 難聴(特に感音性難聴)
  • 眼の病気(角膜の異常や白内障など)

アルポート症候群の患者さんは、4型コラーゲンを作る働きをする遺伝子に生まれつきの異常があるため、この4型コラーゲンを作ることができません。4型コラーゲンは、腎臓の糸球体基底膜や、耳における内耳、眼の組織などに存在し、その構造を保つための重要な役割をしています。これが、腎臓病、難聴、眼の病気などを認める理由です。

遺伝形式と進行の違い

アルポート症候群には遺伝形式により以下の3つのタイプがあります。

X染色体連鎖型(最も多い):
男性に重症例が多く、平均30歳前後で腎不全に進行します。
女性は平均65歳前後で腎不全に進行します。重症度には大きな個人差があり、中には20歳台で腎不全になる患者さんや、一生血尿のみで腎機能悪化を認めない患者さんもいます。
常染色体潜性型
(以前は常染色体劣性とよばれてました):
男女ともに平均20歳前後で腎不全に進行する傾向があります。
常染色体顕性型
(以前は常染色体優性とよばれてました):
腎不全への進行はゆっくりで、平均70歳前後で腎不全になります。一生血尿のみで腎機能の悪化を認めない患者さんもいます。

約90%の患者さんは家族にも腎炎の方がいますが、残りの約10%は家族歴がなく、遺伝子の突然変異により発症します。

腎不全に進行した場合は、透析(血液透析/腹膜透析)または腎移植による治療が必要になります。
難聴は主にX連鎖型の男性と常染色体潜性型で見られ、重度の場合は補聴器が必要になります。
眼の症状は比較的軽く、視力低下を伴う重症例はまれです。

診断

3歳児健診や学校の尿検査で尿潜血反応陽性(尿中への赤血球の漏出)で見つかることが多いです。病気の進行とともに尿たんぱくも認められます。家族歴と腎生検または遺伝学的検査(遺伝子検査)により診断されます。家族歴(特に両親や兄弟に血尿や腎不全)がある場合は注意が必要で、早期発見、必要な場合は早期治療開始が病気の進行抑制に非常に有効です。1歳以降、定期的に近医で尿検査を実施し、尿潜血反応陽性の場合は小児科腎臓専門医のいる施設に紹介を依頼してください。また、感冒時の肉眼的血尿発作と言って、風邪をひいて、特に発熱した際などに真っ赤〜コーラ色の尿が出ることがあります。
さらには原因は不明ですが、アルポート症候群の患者さんでは幼少期に緑色の尿が出ることがあることが知られております。おむつの尿が緑っぽいと感じた際 には疑って、近医で尿検査を依頼してください。

※一般の小児科医の先生には、この点があまり知られていない場合があります。もし説明が伝わりにくい場合は、こちらのページをご参照ください

以上に当てはまる症状がある場合は、以下の医師のいる病院を受診してください。

【小児】:
小児科を受診してください。尿検査異常がある場合には、小児腎臓専門医への紹介をご依頼ください。
【成人】:
内科、特に腎臓内科を標榜している医療機関をご受診ください。

発熱時のおむつの尿(左は赤褐色、右は緑色)

発熱時のおむつの尿(上は赤褐色、下は緑色)

遺伝学的検査(遺伝子検査)に
ついて

遺伝子検査は、原則として全国の医療機関から提出可能です。
小児の場合は、小児腎臓病を標榜とする施設、または日本小児腎臓病学会の会員が在籍する施設で、遺伝子診断を受けることができます。

保険診療による遺伝子検査をご希望の場合は、主治医へご相談ください。
また、神戸大学医学部附属病院小児科、および東京科学大学病院腎臓内科では、研究として遺伝子検査を実施しています。
ご希望の場合は、主治医へご相談ください。主治医より神戸大学または東京科学大学へ連絡を行います。

アルポート症候群は希少疾患であり、腎臓病専門医においても診断が難しい病気です。

治療法病型の理解と早期診断、必要時は早期治療開始が重要です。

アルポート症候群の根本治療は現在ありませんが、ACE阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)といった薬剤が使用されます。
これらはもともと血圧を下げる薬として使われていましたが、腎臓の保護効果もあるため、アルポート症候群の腎不全進行を遅らせることに有効です。若年期から服用を開始すれば、腎不全への進行を10~20年遅らせることが可能なこともあります。
比較的重症の経過を示すX染色体連鎖型男性患者と常染色体潜性患者においては診断が着き次第できる限り早期(ただし1〜2歳以降)に、X染色体連鎖型女性患者および常染色体顕性患者においては、尿潜血に加え、尿たんぱくまで認める場合は、これらの薬剤による治療開始が推奨されています。また、新たな治療薬の研究や開発も進行中です。
今後はさらに腎不全の進行を遅らせ、患者さんの生活の質の改善が期待されています。

アルポート症候群は遺伝子の異常で発症するため、子どもへの影響も考慮する必要があります。
遺伝に関してはすべての病型で遺伝形式や重症度が異なりますので、主治医の先生に確認し、正しく理解してください。
早期に治療開始することで、腎不全進行を遅らせることが可能ですので、家系内の患者さんを早く見つけられるように配慮する必要があります。

監修:当会医療アドバイザー 野津 寛大先生
神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野 教授

アルポート・小話アルポート症候群の名前の由来

「アルポート症候群」という名称は、1927年に、遺伝性腎炎と家系内にみられる難聴について詳しく報告したArthur Cecil Alport(1880-1959)の名前に由来しています。
実は、家族内でみられる腎疾患について最初に報告したのは、1875年のDickinsonとされています。Dickinsonは、3世代にわたる17人を調査し、そのうち11人にアルブミン尿が認められたことを報告しました。1)
その後も、Kidd(1882年)2)、Pel(1899年)3)、Aitken(1909年)4)らによる報告が続きました。
さらに、1902年にGuthrieがある家系について報告し(1902)5)、その後も同じ家系から追加の症例報告が行われました。
そして、この家系について最終的にまとめたのが、1927年のAlportによる報告でした。
Alportは、Guthrieが報告した家系を詳しく調べ、その中で感音性難聴が高頻度にみられることを示しました。
その後、1961年にWilliamson が、それまでの報告を整理し、現在につながる診断基準を示したうえで、「Alport's Syndrome(アルポート症候群)」という名称を提唱しました。7)

参考文献

  • Dickinson, W.H. Disease of the kedney and urinary derangement Part2, London, Longmans, Green, 1875: 378
  • Kidd, J. Inheritance of Bright's disease of kidney Practitioner. 1882; 29: 104
  • Pel, PK. Die Erblichkeit der chronischen Nephritis. Zeitschrift fur klinische Medizin. 1899;38 :127.
  • Atken, J. Congenital hereditary and family haematuria. Lancet. 1909;2: 444
  • Guthrie, LG. Idiopathic, or congenital hereditary and family haematuria. Lancet. 1902;1: 1243
  • Alport, A.C. Hereditary Familial congen-ital haemorrhagic nephritis. British Meducal Journal. 1927;1: 504-506
  • Williamson, D.A.J. Alport's syndrome ofhereditary nephritis with deaf ness. Lancet. 1961;2: 1321
  • 鈴木安恒, 神崎仁. 難聴を伴う家族性腎炎(Alport症候群). 日本耳鼻咽喉科学会会報. 1964;67(8):1175-1181
  • 栗田建一, 喜友名千佳子, 野田寛, 伊礼基治. 家族性遺伝性腎炎を伴う難聴症例. 琉球大学保健学医学雑誌. 1978;1(4): 320-328
  • 日本小児腎臓病学会. 『アルポート症候群をはじめて報告したのは誰?』アルポート症候群ガイドライン2017 .診断と治療社. 2017. p2.
  • Nozu K, Yamamura T, Horinouchi T. Alport Syndrome. GeneReviews
  • Nozu K et at. A review of clinical characteristics and genetic backgrounds in Alport syndrome. Clin Exp Nephrol. 2019Feb23(2): 158-168

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